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小城簡易裁判所 昭和48年(ろ)4号 判決 1973年1月16日

主文

被告人を罰金一五、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用中証人久富勝磨(二回)、同内田忠義、弁護人吉浦大蔵に各支給した分の二分の一は被告人の負担とする。

理由

一、罪となるべき事実

被告人は自動車運転の業務に従事するものであるが、

昭和四八年二月一〇日午後九時五分ごろ、普通乗用自動車を運転し、多久市北多久町大字小侍一、〇八九番地先の交通整理の行なわれていない交差点を北方番所方面から南方武雄方面に向け直進するに際し、赤点滅の表示に従つて、交差点手前で一時停止した際、被告人が進行していた道路(幅員六、二〇メートル、交差点南方は幅員九、一〇メートル)と交差する西方唐津方面から東方小城方面に通ずる幅員の広い国道(歩、車道の区別があり、車道幅員一〇、一〇メートル)をかなりの速度(時速約五〇キロメートル自至五五キロメートル)で同交差点に向つて進行する内田忠義(当二九年)運転の普通乗用車を、右斜め前方約五〇メートルの地点に認めたのであるから、同車の動静に十分注意し、安全を確認しながら、進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、自車が先に通過できるものと軽信し、その動静に注意せず、進路正面を見ながら時速約五キロメートルで発進した過失により、右内田運転の自動車に自車右側部を衝突させ、よつて同人に加療約一ケ月を要する下顎骨骨折等の傷害を負わせ

たものである。

二、証拠の標目(省略)

三、法令の適用

被告人の判示所為は刑法第二一一条前段、罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するところ、本件事故当時における本件交差点の状況に照し、被害者内田忠義がその直前で徐行しなかつたことは、道路交通法第四二条に違反している疑いがないではなく、かつ、被害者内田がこの徐行をしていれば本件衝突は起らなかつたかも知れないと考える余地があつて、この意味で、右徐行懈怠と、本件の結果の発生との間には条件的な因果関係があるといえなくはないことも考慮し、所定刑中罰金刑を選択し所定金額の範囲内において、被告人を罰金一五、〇〇〇円に処し、この罰金を完納することができないときは、刑法第一八条によ、り金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により、証人久富勝磨(二回)、同内田忠義、弁護人吉浦大蔵に各支給した分の二分の一は被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

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